思えば遠くへ来たもんだ

怪しい認知科学を紹介しながら、行き着くところへ目指すのを綴る場所

色の恒常性 color constancy

飽きずに知識をぶん投げて、記事の数を稼ぐクズとは僕のこと。

 

今日は、色の恒常性についてです。

色の恒常性とはなにか。

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上の画像が元の画像。下の画像は、青フィルターをかけた画像です。

「上の画像でも下の画像でもりんごは赤やん」

って言う状態。これを「色の恒常性」といいます!

 

終わり。

 

 

 

もっと具体的に書きやがれ

色の恒常性とは「その環境の照明光に依存されることなく、物体が常にその色だと

知覚される現象」のことを指します。

先程の画像だと、上の画像と下の画像のある部分の色というのは

スポイト等で抜き出してみると、物理的には違う色で構成されています。

にも関わらず、りんごは赤!と殆どの方は知覚してしまいます。

このように、環境に左右されず、安定した物体色の知覚を行う処理が人間に

備わっているということです。

実際、日々の生活でもこの恒常性を体験しています。

それは、昼間と夕方です。

昼間は、白色光に近い環境で我々は、物体の色を知覚していますが

夕方の日が沈む頃は、外にある物体は橙色のフィルターがかかったような

形で、身の回りにあるものを見ています。

ですが、我々は「あれ?色違うね」と感じることなく、この葉っぱの色は緑

とかアスファルトの色は灰色だ、と一日中認識する事ができます。

もっと、身近なところでは、ある物体が白色光に直接照らされている場合と

机の影にある場合では、物理的に色が異なるはずなのですが

物体の色が変わった、と違和感を覚えることなく安定した一つの知覚をしています。

このように、色の恒常性があることによって、我々は何の疑問も持つことなく

生活を送れている訳ですね。

 

 

 

色の恒常性は経験によるもの

この題材にした理由は、僕が初めて読んだ論文が「色の恒常性」に関する論文だった

からです。

とは言っても、今の所その分野とは関係ないところで働いているのですが。

研究室配属されて、初めて論文を読み、ゼミで発表することが決まったときに

何にしようか、迷っていたところ、何となく色に興味があったため

調べていると、面白そうな論文がありました。

その経緯については、実はよく覚えていないのですが日本人の方々が

だした論文で、ショートペーパー(6ページぐらいの)だったこともあって

最初としては読みやすく(と思っていたが、実は色自体がそもそも難しい研究分野だと

ことをこの時点は知らなかったのです、今考えると無知ほど恐ろしいものは無いな

と思った)内容もインパクトがあったので、これに決めたのです。

それが

Experience in Early Infancy Is Indispensable for Color Perception - ScienceDirect

という2004年に杉田陽一先生という早稲田大学教授の方が出した論文です。

 

この内容は端的に言うと

「生まれて間もないお猿さんを、単色光(蛍光灯が赤だったり青だったり単一色の光の

元)の環境下で、一年間過ごしたあとに、色の知覚やカテゴリの結果がどうなるか」

という愛護団体も真っ青な実験を行っているすごい論文なのです。

(因みにこの時期は、まだ猿での実験というのは許可されていました。最近は

多分出来なくなっている)

 

まだ色認知というものが脳の中で形成されていない状態で、本来な白色光の

元で「正常な色知覚が行える」ように徐々に学習していくはずだったのに

それを単色光という環境下で、周りの猿とは違った色認知を学習してしまう

という割と残酷な実験ではございます。

 

ただ、これにより普通に育てられた猿であれば、最初に出した画像で

フィルターが掛かっていても「赤」と答えるのにも関わらず

単色光で育てられたおサルさんは、フィルターが掛かった途端

「青」と答えてしまい(厳密には違うが)、結果として色の恒常性の処理が

他のおサルさんとは異なるようになってしまった。

これにより、色の恒常性は生まれてから数ヶ月で形成されていくというのが

動物実験によって分かった、偉大な研究でありんす。

(ちなみに、他の猿と異なると書いたのは、色の恒常性に関する処理が無くなったわけ

ではないということです。単色光で育てられた猿は、その単色光下を基にして

色認知を行うので、一般的に育てられた猿とは異なるデータベースを持っている

がために、色の恒常性が無くなったということです。)

 

認知科学の研究において、人間のメカニズムを明らかにするために

動物実験を行う研究は割とあります。

その中でも、この研究は人の「色の恒常性」は生まれて、育てられた

環境下によって形成されるということを示唆した内容でしょう。

 

 

 

 

 

 

色の恒常性を用いた錯視

一番上にあるのも、錯視といえば錯視なのですが、だいぶ前に流行った

ある画像が、色の恒常性と関係する錯視があります。

それがこちら。

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ドレスの色は何色か、という奴です。

(画像元は削除されていたので、

なぜドレスの色の錯覚はおきたか?-色の恒常性- - Sideswipe

から、引用しました)

 

本当なら青黒なのに、白と金に見える人もいるというのことで

一時期話題になったやつです。

kazoo04.hatenablog.com

僕が説明するよりも、詳しいことが書かれていますので

ぜひご覧になって下さい。僕もこの方の記事は、論文を読んでいる当時に

じっくりと見た気がします。

 

ようは、画像の場合環境光の詳細がわからないので、人間が勝手に

環境光の推測をして、こう見えるだろうと処理した結果

外界とは間違った知覚になってしまった例です。

 

他にも、面白い色の恒常性に関する錯視としては

立命館大学北岡明佳先生という方が、まとめていらっしゃるHPが

あります。

http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/colorconstancy.html

この方は錯視においては、超有名な方でございます。

他にもいろいろな錯視をまとめていらっしゃるので、一度閲覧されては

如何でしょうか。

 

また、色の恒常性については以下のサイトを見るとよろしいのです。

決して脳科学辞典の回し者ではございません。本当に。

色の恒常性 - 脳科学辞典

 

 

最後に

本記事で引用した論文の著者である、杉田陽一先生が、2018年2月1日に

お亡くなりになりました。

僕自身は、一度もお会いしたことがないのですが色の恒常性という題材を

記事にするに辺り、初めて読んだ論文の著者の方ということもあって

非常に拙いブログ記事で申し訳ないのですが、記すことにしました。

また、間接的にはですが、研究会にてお世話になりありがとうございました。

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。