思えば遠くへ来たもんだ

怪しい認知科学を紹介しながら、行き着くところへ目指すのを綴る場所

「見えている」は見えていないかもしれない

「見えている」とはどういう状態を表すのでしょうか?

 

殆どの人は「視野上にあるもの」と言うかもしれません。

あるいは「網膜上に映し出された像」のこと、と言うかもしれません。

または、「未来のことがわかる」状態のこととか、兎に角見えている

という言葉には色々な意味で使われる言葉です。

 

ところで、僕のブログのドメイン名に使われているvisual awarenessという

言葉は、「視覚的意識」とか「気づき」という意味合いを含みます。

そして、その単語の定義は「視野上に映るものを認識し、『今、〇〇が見えている』

と答えられる状態のこと」を言います。

これが、見えているということです。

 

 つまり、視野上にあったり網膜上に映っていても、気づかなかければ

それは見えていないということです。

「えー、でも視覚上に入力があれば、必ず見えるでしょー」

と言う方がいらっしゃると思います。

 しかし、実はそうでもないのです。その事を反証する現象があります。

それは・・・。

 

 

両眼視野闘争 -Binocular rivalry-

殆どの方は、聞いたことがないと思います。そして、大体の人は体験せずに

死に行く定めでしょう。

これは何なのか、と説明すると

「両目にそれぞれ異なる物を見せ、融合させようとすると、片方の物しか

見えず、しかも数秒ごとに、見えるものか交互に切り替わる」

という状態のことを、両眼視野闘争と呼びます。

一番、簡単な例を挙げましょう。

 例えば、この画像。

 

 

f:id:anmitsuc:20180906221259p:plain

 

赤い男の人と、青い色の家が重なった状態の画像です。(図はTongという方々が使った有名な画像です)

 

これに、参加者は3Dグラスを欠けて観察します。

そう、懐かしの赤青メガネです。

「赤青メガネ」の画像検索結果

これを掛けた状態で、さっきの画像を見るとします。

すると、赤と青のフィルターによって、片目には赤の顔だけが

もう片目には青の家が網膜上に映ることになります。

ところで、僕らは何故、両目で見ても一つの物体を正しく見ることが

できるのでしょうか。

同じ物体を見ても、右目と左目では、微妙に情報が異なります。

そのため、本来ならば右目と左目で映るものは、違うものであると認識する

はずなのですが、何故か私達は混乱せずに生きていけてます。

ここでは簡単に言いますと、「片目の網膜のある部分ともう片目の網膜のある部分に

対応関係がある」ことで、上記の混乱を防ぐことができます。

左目の網膜上のある部分の情報と、右目の網膜上のある部分の情報は同じです

ということを人間が、無意識上にやっているということです。

(厳密には違うのですが、ここではそこが本題ではないので適当な説明にします。)

 

さて、右目と左目に異なる物体が映る状態になった今。

どのように見えるのでしょうか。

「え、普通に重なって見えるんじゃないの?」

という人が殆どだと思います。

しかし、現実はこのようになります。

f:id:anmitsuc:20180906222319p:plain

(Tong,Nakayama,Vaughan and KanWishher,1998 p.754 Figure 1 一部引用)

 

このように、1枚の画像だけが見えている状態が永遠と続きます。

最も、このようにきれいに交替することはあまりありませんが、少なくとも

同時に二つの画像が重なって見えるということはないです。

 

この現象で何が言いたいかというと

「網膜上に映り続けても、必ずしも見えているとは限らない」

ということです。

つまり、網膜だけの抹消では見えているという状態に、持っていくことが

出来ないのです。

それに気づく必要がある、それがあって始めて「見えている」と言えるのです。

 

もっと、身近な例でいいますと、半側失認という病気があります。

これは、「視野の半分に映っているものが認識できない」というものです。

本人は、視野に問題がないと感じているのですが、実際映っていても

それを認知できないので、物や人にぶつかったり、片側だけ映っている食事を

残すなどしてしまう、深刻な病気があります。

これもまた、本来なら「見えている」けど見えていない状態の例だと思います。

 

このような感じで、見える、見えないは眼だけの問題ではありません。

むしろ脳があって、始めて見える、見えないと認知できるわけです。

我々は末梢から高次に至るまで、色々と検討しなくてはならないのです。

 

意識高いことを言いますと、「視野をもっと広げようぜ」

「見えているものだけが真実ではない」

ということでしょうか。こういった、現象や病気によって

人の考えにも影響を及ぼすことがあるので、意外と勉強は馬鹿にはならない。

つまり、締め方が分からないのですが、どうしたらいいのでしょうか。

教えてください。

 

 

ちなみに・・・

何か両眼視野闘争に興味を持ったよーって言う人がいたら

下の方に行くと、色々と面白いことが書いてあります。

両眼視野闘争 - 脳科学辞典

まとめている人が、ちゃんとした研究者の方々なので、割と信頼性の高い

内容になっております。

ちなみに、途中であげていた画像の引用元の論文はこちらです。

Binocular Rivalry and Visual Awareness in Human Extrastriate Cortex - ScienceDirect

これは、fMRIという病院でも使われる、脳の血流中の酸素変化から

どこの部位が反応しているか調べる機会を使って、実際に両眼視野闘争中の

反応を調べた研究になります。

古い論文ではありますが、顔に選択的に反応する部位と家に選択的に反応する

部位の反応の変化が、ちゃんと両眼視野闘争の交代と一致しているという

この分野でも割と、影響度の高い研究内容になります。

実際に、さっきの脳科学辞典でも引用されているぐらいなので

学生の方々とかは、無料で見れるかもしれないので見てみるといいかもです。

(社会人の方々は支払うなりなんなり・・・、許してください)

 

という宣伝をして僕は、今日も見えない一日を難無く過ごせたのでした。

マジ感謝。